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October 12, 2008

「ぐらり!大江戸烈震録」

そうでしたか。地震てのは、いろんな罪作りをしやしたね。地震前と、あとでは、がらりと人間を変えちまいやしたよ。
 私もねーー旦那、聞いてくれますか?

「ぐらり!大江戸烈震録」出久根達郎著(実業之日本社) ISBN: 9784408535043

幕末の江戸。安政大地震発生と復興を背景にした、江戸庶民の心模様。

2001年から06年に発表した、地震をテーマにした短編を再編。第一部は仏具店の娘おようと縁者が、いろいろな事情から被災体験のインタビュー集を書くことになる話。第二部はその「安政地震見聞録」の抜粋という構成になっている。さらに最後の「あとがきにかえて」という1章は、「見聞録」の現存をめぐる逸話になっていて、古書店主だった著者ならではのなかなか凝ったつくりだ。

いやー、それにしてもいつもながら、リズムのいい文章。ごく普通の言葉を連ねているだけだと思うのだけど、情景の説明が短くて的確だ。読点の配置も、なんとも心地いい。大人の男女の淡い恋心と後悔を、魚のほろ苦さにたとえた「寒たなご」あたりは、うなりますね。(2008・10)

 

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