「すべてがFになる」
「どこにいるのかは問題ではありません。会いたいか、会いたくないか、それが距離を決めるのよ」
「すべてがFになる」森博嗣著(講談社文庫) ISBN: 9784062639248
三河湾の孤島に建つ情報系研究所。少女時代から「幽閉」されていた天才工学博士が殺害された。居合わせたN大助教授の犀川と学生の萌絵が、密室の謎を解く。
2008年いっぱいで自身のブログを閉じると宣言、作家活動についても節目になることを示唆しているという話題を聞き、この機会に一度読みたいと思っていた著者。そのあまりに有名な第1回メフィスト賞受賞作にチャレンジした。
個人的には、現実にはありそうにない密室とか、いろんな約束事が作り込まれた舞台設定というのは、なかなか入り込めなくて苦手。でも、この「真賀田研究所」については意外にするする読み進んだ。システムの解説などをリアルに思えたせいだろうか。仮想現実のシーンなど、いかにもありそうだ。1996年発表ということを考えると、技術の先を見通して、それをわかりやすく示す著者の基礎体力みたいなものが、相当タフだということだろう。
探偵役である犀川は、天才で変人。その相棒は凡人だけどよき理解者、というのが定番だと思うけど、予想を裏切ってもうひとり別のタイプの天才、天然系の萌絵を配したのも、いいテンポにつながっている感じ。登場人物の名前が珍しいのは、何か意味があるのかな。(2008・10)
« 「ツ、イ、ラ、ク」 | Main | 「市民と武装」 »
« 「ツ、イ、ラ、ク」 | Main | 「市民と武装」 »
Comments