「あやつられ文楽鑑賞」
文楽の人形は、魂の「入れ物」である。大夫さんの語り、三味線さんの奏でる音楽、そして人形さんが遣うことによって、はじめて魂を吹きこまれる「容器」なのだ。だから場面に応じて、人間以上に「人間」になることも、聞き役に徹する「背景」になることもできる。
「あやつられ文楽鑑賞」三浦しをん著(ポプラ社) ISBN: 9784591097830
人気作家が綴る、文楽体験とその魅力。
大夫や人形遣いを楽屋に訪ね、著名な演目を解説し、関連する歌舞伎や落語の鑑賞にもチャレンジ。著者は理解できないことは理解できないと、遠慮なく突っ込むし、ときに鑑賞しながら眠っちゃうことも隠さない。あくまで率直、軽妙で、文楽初心者の読者としては、とても親しみを覚える。
とはいえ、そこは作家だから、近松「女殺油地獄」を解釈するあたりは、深い。あえて心理描写を排除した作品の狙いや、同じ演目でも人間が登場する歌舞伎との演出効果の差など、思わずうなってしまう。著者と一緒に、「文楽」という底なし沼にはまっていきそうだ。
インタビューを受けている人間国宝とか、もうすぐ国宝とかの人々が、皆さん飄々と、肩に力が入っていない感じで興味深い。伝統芸能という「我が道」を探究する名人ならではの、風格というものだろうか。また文楽見物に出かけるのが楽しみです。(2008・10)
あやつられ文楽鑑賞 三浦しをん 活字中毒日記
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