「田村はまだか」
「誰か、とても暖かいひとの手で、こうして頭を撫でられながら眠りにつきたい夜が、あたしにだってあったりするのよ」
大人になってもね、とかすかに笑った。
「田村はまだか」朝倉かすみ著(光文社) ISBN: 9784334925987
3月のススキノ、深夜のカウンター。小学校のクラス会のあと、小さなスナックに流れた男女5人が、遠方から遅れて合流する「田村」を待ちつつ、うだうだと「40歳の今」を語る。
評判の連作短編集を読む。とにかく書名がうまい。飲み屋で時計が12時を回り、誰かが何か印象的な短いフレーズを吐いて、それを皆が気に入って延々とリフレインする、というのは、誰にでも覚えがあるシチュエーションではないか。それがこの小説では、「田村はまだか」。
40歳ともなれば、一人ひとり家庭や仕事に大なり小なり屈託を抱えている。今夜のメンバーは気を遣わない旧友なんだから、愚痴りたい。でも40歳にしては甘いかな、という自覚もあって(確かに甘い)、愚痴り過ぎるのも格好悪いと思っている。だから途中まで語って、「田村」を引き合いに出すのだ。
田村はかつてクラスにいて、子供の目からみてもヘビーな家庭環境だったのに、いつも毅然としていた「孤高の小六」だ。まあ、俺もあたしもいろいろあるけど、それにつけても「田村はまだか」。
まあ、酒場の名言というのは大抵、一夜明けたら聞くに堪えない。それをメモってるマスターが、本当にいたらちょっと困りものだけど。さらっと読めて、そういう夜ってあるよな、と思わせる達者な一冊。吉川英治文学新人賞受賞。(2008・9)
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田村はまだか 朝倉かすみ ~かみさまの贈りもの~読書日記
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【あらすじ】
深夜のバー。小学校クラス会の三次会。四十歳になる男女五人が友を待つ。大雪で列車が遅れ、クラス会に間に合わなかった「田村」を待つ。待ちながら各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。今の自分がこうなったのは、誰の影響なのだろう−。それにつけても田村はまだか?来いよ、田村。人生にあきらめを覚え始めた世代のある一夜を、軽快な文体で描きながらも、ラ... [Read More]
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