「四畳半神話体系」
お前はいまそこにある己を引きずって、生涯をまっとうせねばならぬ。その事実に目をつぶってはならぬ。
私は断固として目をつぶらぬ所存である。
でも、いささか、見るに堪えない。
「四畳半神話体系」森見登美彦著(太田出版) ISBN: 9784872339062
快作「夜は短し歩けよ乙女」に先立つ、京都の学生さんのパラレルワールド・ファンタジー。
なんというか、地味でまじめで平凡な大学生の、「役に立たないこと」に満ちた日常のお話だ。要するに「私」は、冴えない自分に苛立っている、ただそれだけなんだけど、これが森見節のファンタジーで語られると、教養があり、それでいてナンセンスな落語風の独特の節回しで、にやにやして読めてしまう。
「夜は短し歩けよ乙女」と比べると、全体に「はちゃめちゃ」は控えめ。とはいえ、癖のある人物や怪しいサークルが期待通りに続々登場し、最後には悪夢のような妄想世界に飛翔して、きっちり着地する。300ページ近くあるのが力作のような、そうでもないような… だけど、やっぱりうまいなー。(2008・9)
森見登美彦『四畳半神話体系』 死角の■
« 「戦争広告代理店」 | Main | 「利腕」 »
Comments
« 「戦争広告代理店」 | Main | 「利腕」 »
こんにちは。
森見ワールドらしい変人がたくさん出てきて楽しい一作ですね。
なかでも、熊のぬいぐるみに「ふわふわ戦隊モチグマン」と名づけ、
蛾を見ると「ぎょえええええ」と絶叫するわりに
主人公たちの変人振りには眉ひとつ動かさないクールな(?)女子大生・明石さんが、
まともそうに見えて一番異彩を放っていたりします。
Posted by: 木曽のあばら屋 | September 05, 2008 11:12 PM
そうそう、その明石さんと恋が成就しちゃうあたりが、いいですよねー。
Posted by: COCO2 | September 06, 2008 11:48 PM