「世界でいちばん幸せな屋上」
そうして分かったのは、「沈黙」というものはやはり、じつに苦いものである、ということであった。妙な結論かもしれないが、結局のところタクシーに乗ることは、そのような「見知らぬ沈黙」と同席することではないかと、私はつくづく思い知ったのである。
「世界でいちばん幸せな屋上」吉田音著(ちくま文庫) ISBN:9784480422941 (4480422943)
クラフト・エヴィング商會のひとり娘で中学生の吉田音(おん)と、父の友人で学者の円田(つぶらだ)さんを主人公にした、「ミルリトン探偵局」シリーズの第二弾。円田さんの飼い猫が、ふらふら出歩いてはくわえて帰ってくる「小さな謎」から、様々な空想を広げる。
SNS「やっぱり本を読む人々。」の推薦文庫を、旅先で開いてみた。山あいで蝉の声を浴びながら、ぽつりぽつり読むのは、なかなか快適な時間だった。
下北沢から横浜、イギリスのどこか北のほうにある町へと舞台を移しつつ、シナモンの香りとか「70年のニール・ヤング」といった小道具で、エピソードをつなげていくところが、うまい。全編に漂うのは、青春のほろ苦い感じ。破綻のない「趣味の良さ」が、なんとも上品だ。
坂本真典氏の写真も楽しめてお得。いつか、ホテル・ニュー・グランドに泊まってみたいなあ。(2008.8)
「世界でいちばん幸せな屋上-ミルリトン探偵局シリーズ2」吉田音 本を読む女。改訂版
世界でいちばん幸せな屋上Boleroミルリトン探偵局シリーズ2 読書狂日記
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