「サンクト・ペテルブルグ」
ペテルブルグはあらゆる意味で巨大な存在なので、「ペテルブルグ学」とでも呼びうる独特の学問・評論領域がある。
「サンクト・ペテルブルグ」小町文雄著(中公新書) ISBN:9784121018328 (412101832X)
在ソ連日本大使館勤務の経験を持つ著者が、「幻想都市」の名所と歴史を案内する。
個人的「ロシア強化月間」第二弾。「素人」向け観光ガイドのかたちをとっており、地図や写真も入っていて読みやすかった。著者自身、「罪と罰」の舞台といわれる街角を訪ね歩くあたり、ちょっとミーハーで親しみがもてる。しかし、真面目に理解しようとすれば、やっぱり複雑で奥が深くて、一筋縄ではいかない。
スラブとアジアの重みを抱えつつ、ヨーロッパに向かって開かれた「近代化の窓」という、成り立ちからして何とも人工的な都市。帝政時代には官僚などとして、大勢のドイツ人が移り住んでいたようなのに、後に悲惨な独ソ戦も経験する。数々の悲劇と矛盾。博物館の展示順の「ハチャメチャ」(混乱)ぶりから、宿命的な混沌に思いをはせるくだりが印象的だ。(2008・6)
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