「おれは非情勤」
非常勤--冴えない響きだ。長くやる仕事じゃないな。
「おれは非情勤」東野圭吾著(集英社文庫) ISBN:9784087475753 (4087475751)
「おれ」は非常勤の小学校教師。病欠の教師などのピンチヒッターとして、学校を渡り歩き、大小の事件に遭遇する。
重い小説を1冊読んだあと、ちょっと休憩のつもりで積読の山から発掘した薄い文庫。初出は「学習」。撤退も噂される懐かしい子供向け雑誌で、つまりはジュブナイルだ。言ってしまえば他愛ない連作を、思いがけず楽しんだ。
解説で細谷正充氏も書いているけれど、教育に情熱なんて持ち合わせない主人公のたたずまいが、なんともハードボイルドで小気味いい。事件に遭遇するたび、「ついてないな」と面倒くさそうに謎解きをして、最後に短く気の利いたセリフで人生を語ったりする。メインの連載は97年ごろだから、出世作「秘密」の刊行時期だろうか。子供向けでも光る、この職人技。東野作品はほとんど読んでいると思うが、まだこんな「発見」もある。(2008・5)
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