「Carver’s Dozen」
これはなんというか、立派な人が一人もでてこない立派な小説です。
「Carver’s Dozen」レイモンド・カーヴァー著、村上春樹編・訳(中公文庫) ISBN:9784122029576 (4122029570)
村上春樹が愛する短編、詩、エッセイを収めた「レイモンド・カーヴァー傑作選」。1編ずつ、冒頭に村上春樹の短い解説が付いていて、引用はその中の一節だ。
あらかじめ筋書きを知っていても、読んでしみじみとしたり、はっとしたりするのは何故だろう。突然、掃除機のセールスマンが家に訪ねてくる「収集」の、居心地の悪さ。名前はつけられないけれど、何か大切なものを見つけた感じがする「大聖堂」。そして何といっても、一人息子が誕生日の朝に事故に遭ってしまう夫婦を描いた、「ささやかだけれど、役に立つこと」。
理不尽な人生に対する深い悲しみと、悲しいからこそ感じることができる小さな温かさ。泣けます。本を読む楽しみを噛みしめる一冊。(2008・5)
レイモンド・カーヴァー傑作選/レイモンド・カーヴァー ここではないどこかへ
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