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March 05, 2008

「私の男」

みんなの前で情けなさをさらす、わたしのたったひとりの親族。そのひとりきりの退廃に、こっそり、みとれた。私の男は、やっぱり、だらしなくてもうつくしかった。

「私の男」桜庭一樹著(文藝春秋)  ISBN:9784163264301 (4163264302)

父、淳悟と娘、花。その15年にわたる禁断の愛、そして罪の軌跡。

話題作をようやく読んだ。修飾語をたっぷり散りばめて、社会から隔絶されたような父娘の閉じた退廃の世界を、濃密に描く。深く結びついているけれど、二人をそうさせているのは、それぞれが抱える過去。最も愛されたい人に拒絶されたという過去なのだ。求めても埋まることはない、喪失感。その徹底した「行き場の無さ」が、まず印象的だ。

多くのブロガーも指摘しているように、「作り話」が上手だなあ、と思う。主人公の、腐野(くさりの)という不思議な名字。癖のある人物像。語り手を変えながら、章ごとに二人の歴史を遡って事件の背景を明かしていく、吸引力のある構成。そして運命の節目には、暗示的なイメージが繰り返される。例えば震災の街に立ち上る煙と、凍てつく海にたなびく冬の霧「けあらし」。あるいは花の「罪」を運ぶ船の冷蔵室と、二人の出発点となる保冷車…。目を離せない書き手であることは間違いない。第138回直木賞受賞。(2008・2)

「私の男」桜庭一樹  ナナメモ
私の男  桜庭一樹  今更なんですが本の話
『私の男』 桜庭一樹 文藝春秋  でこぽんの読書通信

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