「ウインクで乾杯」
「眼鏡にかなうためには、いろいろと大変なのよ。ねえ、あなたクラシックに詳しい?」
「全然詳しくない」
「音楽は何を聴くの? 刑事だから、やっぱり演歌?」
「どうして刑事だったら演歌なんだよ。俺はだいたい、若い女性ロックが好きなんだ。特に好きなのは、『プリンセス・プリンセス』だな」
「ウインクで乾杯」東野圭吾著(祥伝社文庫) ISBN:9784396322632 (4396322631)
コンパニオンとして働く女性がホテルの一室で、毒入りビールを飲んで命を絶つ。仕事仲間の小田香子と、若い刑事の芝田は自殺説に疑問を感じ…。
積読の山のなかから思いついて、古い文庫を手にとった。88年新書判で出た「香子の夢」の改題。88年といえばデビューから3年。相当初期だ。裏表紙には「ミステリー界の若き騎手が放つ」と書いてあって、人気作家の歴史を感じさせる。
内容は軽妙で、よくできた2時間ドラマのよう。密室や、隠されたメッセージなどの謎解きがきちんと入っている。加えて、ヒロイン香子の描き方に著者の「達者さ」の片鱗がみえる。香子はコンパニオンの仕事で知り合う男性との「玉の輿婚」を狙っていて、気に入られようと無理して男性が好きなクラシックを学んだりする打算的な女性。それでいて言動がさばさばしていて、同僚に友情を感じて涙する一面もあり、憎めない感じがする。刑事の芝田との掛け合いも、いいテンポで爽やかだ。
東野作品はこれまでかなり読んでいる。順次感想を書いて整理したいけど、なかなか手が回らないなぁ… (2007・12)
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