「逢わばや見ばや 完結編」
「古本屋って変らないでしょう? 昔のまんま。だから店に入ると、昔の自分がいるんだなあ。学生の自分が。見たくもない癖に、見たくなるんだよね」
「逢わばや見ばや 完結編」出久根達郎著(講談社) ISBN:9784062137355 (4062137356)
自伝的小説シリーズの三作目。昭和48年、高円寺に古書店「芳雅堂」を開業してから、六十歳を過ぎた現在まで。
古本を持ち込んでくる、決して過去を語らない廃品回収業者や、顧客、同業者たちとの交流が温かい。一期一会も腐れ縁もとり混ぜつつ、誠実な人との付き合いを綴る。
著者独特の、飾り気のない筆致が相変わらず魅力。自らあと書きで、「何しろ小説家の筆であるから、差し障りのない嘘が多分に施されている」と告白しているように、これはノンフィクションではなく小説なのだろう。けれど、主人公の古本への愛着、そして古本屋としての誇りは100%真実だ。目録の体裁に工夫するくだりなど、商人としての努力も興味深い。(2007・10)
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