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November 15, 2007

「有頂天家族」

「ああ、どうしよう矢三郎。我が一族の頭領、兄さんの絶体絶命の危機だというのに、俺はなんだか妙に面白くてしょうがないよ。ふざけたことだなあ」
「かまわん、走れ兄さん。これも阿呆の血のしからしむるところだ」

「有頂天家族」森見登美彦著(幻冬舎)   ISBN:9784344013841 (4344013840)

京都・糺ノ森に住む狸の下鴨一家。脳天気な三男坊、矢三郎は絶体絶命の母と兄を助けるべく、狸界の覇権を狙う宿敵・夷川一家や、狸鍋を食う「金曜倶楽部」を向こうに回して、師走の古都を疾走する。

楽しみにしていた痛快ファンタジーを読む。語彙が豊富で、ところどころ美文調なのが、まず心地いい。「しからしむるところ」なんて、声に出そうとしても舌が回らないけれど、リズムがいいから軽快に読み進められる。

設定は、まあとにかく、腹をくくって荒唐無稽だ。愛すべき狸と天狗、人間(「半天狗」含む)が、ほぼ同等の立場で入り乱れる。「はちゃめちゃ」と思わせておきながら、その実、軸にあるのは今時まっすぐな家族愛だ。そこに師弟の信頼や、淡い恋心もからまり、端役に至るまで、きっちりとそれぞれの人情を描く。それでいて、ちっとも説教臭くないのが肝心なところ。うまい、と唸るほかない。

特に印象的なのは、飛翔シーンの爽快さだ。要所要所で登場人物が、思い切りよく夜空を飛ぶ。眼下には五山の送り火やら、賑わう年末の街やらの美しい明かりが瞬く。ストップモーションが目に浮かぶような、垂直移動の開放感。ちょっと宮崎アニメを彷彿とさせる。
飛んでいるうちに、なぜ飛んでいるのかを忘れ、もっと飛びたくなってしまうのは、なにも思慮が足りない狸ばかりではないだろう。(2007・11)

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Comments

TBありがとうございます。
弁天様の小悪魔的な飛翔に私はうる星やつらなどを思い浮かべてました。ちと古いですね。でも舟を浮かべての乱痴気騒ぎにはぽんぽこを連想しました。

ところでメンテとぶつかったためか、TBがうまく送れないので、また後日おじゃまいたします。

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