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November 18, 2007

「夜明けの街で」

 大黒埠頭のパーキングエリアに秋葉はボルボを止めた。土曜日の夕方なので、駐車場は混んでいたし、レストランもいっぱいだった。
 僕たちはハンバーガーと飲み物を買い、埠頭を眺められる広場に上がった。雨はすっかり上がり、空気もひんやりとしていて気持ちがよかった。
 あっ、と秋葉が空を指差した。そちらに目を向け、おっと僕も声を漏らした。短い虹がうっすらと出ていた。
「虹を見るなんて何年ぶりかな……」

「夜明けの街で」東野圭吾著(角川書店) ISBN:9784048737883 (4048737880)

建設会社の主任で、家庭ではよきパパの渡部が、職場にやってきた派遣社員の秋葉と思いがけない恋に落ちる。秋葉の家庭では15年前、ある殺人事件が起きていた。

ドラマ「ガリレオ」でまた注目されている作家の最新作を読む。不倫の話である。ミステリーとしては、あえて言えば、さほど意外ではない。まあ、不倫の経緯だってそう意外ではないのだが、その分、不倫のプロセスの男性心理を描写する技が際だつ。
「もう若くない」と自覚しているから、そこを逆なでしてくる女性が気にかかる。二人でいるとき、突如意味不明に泣き出されて、放っておけないと思う。特に後半、恋心と疑心暗鬼や保身との間で行きつ戻りつするさまが、作家の才気を感じさせる。秋葉がよく、黒い服を着ているのも何だか意味深だ。

「秘密のデート」の舞台は横浜。タイトルからして全編、サザン・オールスターズのヒット曲をモチーフにしているようだ。物語中のカラオケのレパートリーにも登場、サザンは「中高年」の象徴なのだなあと、再確認して感慨を覚えたりする。

末尾にわざわざ「番外編」として、友人のモノローグが付け加えられている。この物語の主題が謎解きではなく、不倫の心理のほうにあることを念押ししているかのようだ。んー、東野さん、何かあったんでしょうか… (2007・11)

「夜明けの街で」東野圭吾  ナナメモ

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