「ししゃも」
自分はこの町の色に染まっていくのではない。この町とともに、色を変えていくのだ。
「ししゃも」仙川環著(祥伝社) ISBN:9784396632854 (4396632851)
リストラで一流商社を辞めた恭子が、やむなく戻った北国の故郷で出合う「虹色のししゃも」。この珍しい魚を巡って、町おこしの一大騒動が始まる。
医療ミステリーのイメージがあるこの作家としては、異色の題材。失踪事件と、その謎解きはあるものの、ストーリーの中心はミステリーというより、さびれた地方都市の人模様だ。挫折を挽回しようとする主人公の、やや身勝手な町おこしへの情熱が、平凡な住民たちの心をかき乱す。小さなセットで展開する、昼の帯ドラマのような味わいだ。
虚勢や反発、あつれき。ささやかで平凡だけれど、人間関係のひだが細やか。(2007・9)
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