「しゃばけ」
「ねえ、佐助たちは何ていう妖なの? お堀の河童? それともお墓の幽霊?」
この問いに祖父や妖達が笑っている。どうやら河童ではないようだった。
「犬神と申します」
「白沢と申します」
「しゃばけ」畠中恵著(新潮文庫) ISBN:9784101461212 (410146121X)
江戸・京橋近くの大店の若旦那、一太郎が薬種問屋殺しに巻き込まれた。一太郎は小さいころから病弱で、しょっちゅう寝込んで半分幽閉されているような暮らしだけれど、助けてくれる者が大勢ついている。人ではない、妖(あやかし)たちが。
評判の「しゃばけ」シリーズ第一作をようやく読んだ。「若だんな、笑い事じゃぁ、ありません」。落語のような江戸言葉のリズムが心地よい。
そして摩訶不思議な妖たちがチャーミングだ。小さいころから若旦那の身近にいて、役に立とうとしたり、相手にされないとすねたりする。派手な衣裳の色男で、時に憎まれ口を叩く「屏風のぞき」や、ちょろちょろする小鬼たち。柴田ゆうの挿絵が生き生きしている。
でも、ウェブで検索してみると、犬神の伝説とか白沢(はくたく)とか、本性はかなり怖いぞ。人間の欲やこの世の悪を知り尽くしながら、素顔を隠してひっそりと生きるものたち。そんな存在に囲まれて暮らす一太郎は、世間知らずにみえて、実は芯の強さを隠し持つ。しかもまだ17歳なんだなー。
ひょうひょうとした筆致だが、なかなか一筋縄でいかない物語世界だ。(2007・8)
畠中恵「しゃばけ」 drunker's high
しゃばけ(畠中恵) のほ本♪
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