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July 21, 2007

「鹿男あをによし」

「奈良の高校だよ」
「奈良ですか?」
 おれは思わず声を上げた。ずいぶん遠いところである。
「僕はとてもいい話だと思うんだな。奈良といったら鹿だろう、大仏だろう。いかにも、ゆったりしてそうじゃないか。悠久の都の余韻や深し、心の余裕を取り戻すには最適だ」

「鹿男あをによし」万城目学著(幻冬舎)  ISBN:9784344013148 (434401314X)

産休補助として不本意ながら奈良の女子校に赴任した理科教師の「おれ」に降りかかる、災難と大冒険。それは鹿との出会いから始まった…

あれよあれよと、訳の分からない騒動に巻き込まれていく主人公の戸惑いぶりが、ユーモアあふれる語り口で畳みかけられ、読んでいて思わず笑みがこぼれるファンタジー。

それでいて古代史や神話の蘊蓄、関西観光地図を踏まえた仕掛けがたっぷりで、読み応えがある。なにしろ登場人物の姓が、藤原だの長岡だの、どこかで聞いた都の名前だ。奈良というおおらかな舞台装置が、ひょっとすると、こんな風に千年のスケールで何かが仕組まれているかも、と思わせて絶妙。

個人的には、にわか教師と教え子との交流がしっかり織り込まれているところに惹かれた。本当はきれいなのに、容貌にコンプレックスをもつ少女の鬱屈。それを吹き飛ばすように、スピード感あふれる剣道の試合のシーン。誰でも思い当たる「若い日々」が、荒唐無稽なおとぎ話を支えている。

登場するのは悪人なし、身勝手さえもお茶目なキャラクターばかり。楽しませてもらいました!(2007・7)

☆追記 08年1月玉木宏主演でドラマ化。

鹿男あをによし   香桑の読書室

鹿男あおによし 万城目学  ”やぎっちょ”のベストブックで幸せ読書!!

「鹿男あをによし」万城目学     本を読む女。改訂版

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Comments

こんにちは~♪
>なにしろ登場人物の姓が、藤原だの長岡だの
あ~そっかぁーー。ぜーんぜん気がつきませんでした。しまった!次は大阪が舞台の小説を書いていらっしゃるそうですよ。楽しみだなぁ。神戸も書いてほしいです★

こんにちは~♪
>なにしろ登場人物の姓が、藤原だの長岡だの
あ~そっかぁーー。ぜーんぜん気がつきませんでした。しまった!次は大阪が舞台の小説を書いていらっしゃるそうですよ。楽しみだなぁ。神戸も書いてほしいです★

COCO2さん☆Blogpeople Review Me!の評価ありがとうございました。
このストーリーみたいに、鹿に突然話しかけられたらビビりますよね、きっと。
でも、鹿と話をしてみたいななんて思ったりもします。

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