「名もなき毒」
土地ってのは人間の歴史ですものねと言う。
「そこに住む人間の営みが刻み込まれてる。でも、良いことばっかりとは限らない。邪悪も染み込んでる。それが"毒"だ」
「名もなき毒」宮部みゆき著(幻冬舎) ISBN:9784344012141
今多コンツェルンの社内報編集者、杉村三郎がふとしたきっかけで出会った少女は、連続毒殺事件の遺族だった…。
著者3年ぶりの現代ミステリーをようやく読んだ。「誰か」でデビューした、影が薄くて欲のない婿殿、杉村の再登場だ。480ページを超える長編で、主役が毒殺事件に巻き込まれるのはやっと100ページあたり。新聞連載に加筆したせいか、ゆったりペースで地味ながら、お馴染みの達者な筆致で楽に読み進められる。
無差別毒殺、土壌汚染、そして心に巣くう嫉妬や嘘。すぐ隣にあるこの世の「毒」を、丁寧に描く。思えば著者は名作「火車」からずっと、憎むべき、それでいて切ない犯罪者を描いてきた。
犯人が判明してミステリが解決しても、そんな罪を招いた「毒」そのものを割り切ることはできない。決してスカッとはしないから、ちょっと物足りないという読後感もあるかもしれないが、現実の方があまりに悲惨な昨今だからこそ、割り切れない「毒」から目を背けない姿勢が印象に残る。あの、全編のたうち回るような「模倣犯」を経て、著者の現代ものは、どこか透明な域に達しつつあるように感じる。
常識人の杉村に、財界の大立て者で理解ある重厚な義父。それに今作はハンサムな若手評論家の秋山、賑やかなバイトのゴンちゃんも加わって人物の魅力が増した。意図せざる探偵、杉村シリーズはまだまだ続きそうな予感。楽しみだ。(2006・12)
宮部みゆき 『名もなき毒』 日記風雑読書きなぐり
宮部みゆき【名もなき毒】 ぱんどら日記
名も無き毒 乱読日記
「名もなき毒」宮部みゆき 読書とジャンプ
名もなき毒 宮部みゆき 粋な提案
Comments
TBさせていただきました。
久々の宮部ワールド。
ちょっと長かったですけど、堪能致しました。
Posted by: タウム | March 17, 2007 at 02:00 PM