「ガール」
「光山さんなら似合いますよ。合わせる服、いっぱいあるじゃないですか」
「そうよねー。白いキャスケットなんか合いそうな気もするしー」
うーむ、キャスケットときたかーー。
ときとして「引いて」しまうこともあるが、由紀子はこの先輩が嫌いではない。
「ガール」奥田英朗著(講談社) ISBN:4062132893
働く30代女性の気概を描いた、爽快短編集。
それぞれの主人公は、ともすれば「痛い」と切り捨てられそうな、愚かさを抱えている。昇進とか気の合わない同僚とかに、いちいち心が揺れるし、ずるいことも考えてしまう。既婚でも子持ちでも同じだ。でも、企業社会の片隅で、それなりに真面目にやっている。どこが、いけないのか。
一つ一つはいかにも小さな物語。だが目の付けどころに一ひねりあり、ファッションなど細部の情報も的確で心憎い。その細部に支えられて、共感して、元気が出る。「ワーキングガール・ウォーズ」(柴田よしき著、新潮社)よりはもう少し主人公に距離を置き、世相を踏まえながら揶揄に流れない。加減を心得たサービス精神は並大抵でない。生涯一ガール、女同士はわかり合えるーー。至言。
小説現代2003~2005年の発表作品。ポップな装画はノグチユミコ。(2006・12)
« 「八月の路上に捨てる」 | Main | 「ドライブイン蒲生」 »
TrackBack
Listed below are links to weblogs that reference 「ガール」:
» 奥田英朗 『ガール』 [映画な日々。読書な日々。]
奥田 英朗
ガール
30代。OL。文句ある?
きっとみんな焦ってるし、人生の半分はブルーだよ。既婚でも、独身でも、子供がいてもいなくても…。さ、いっちょ真面目に働きますか! キュートで強い、肚の据わったキャリアガールたちのお話を5つ、ご覧あれ。
《こんな... [Read More]
Comments