「ドライブイン蒲生」
僕は心の成長が早い子供だったから、あきらめを受け入れるのが得意だった。夏だけがやっかいなのだ。ひとたび秋になれば、悲しいことなんて他にいくつも落ちていると、毎年、ちゃんと気がついた。
「ドライブイン蒲生」伊藤たかみ著(河出書房新社) ISBN:9784309017662
やっかいな母、あるいは脈絡のない父を回想する短編集。表題作のほか「無花果カレーライス」「ジャトーミン」収録。
著者の「盗作」から「八月の路上に捨てる」に至る道程。これは通らなければならない過去だったのだろうか。
他人の家の中なんて普通、下世話に痩せていて、何かもの悲しい。正直言うと、あまり直視したくない物語だ。だのに読み進むうちにふと、自分の心にも眠っている景色とだぶってドキリとさせられる。軽い筆致なのだが、その不意打ちは重い。書名を斜めにあしらった装丁が印象的。(2006・11)
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