「転生」
これが自分の限界なのだろうか、と岬は思った。他人を信じられないから、自分を追い込んでしまうのだろうか。
「転生(てんしょう)」仙川環著(小学館文庫) ISBN:4094081178
その子はあなたの娘さんです。引き取ってもらいたいーー。ある日突然、眼前に乳児を置き去りにされたフリーライターの深沢岬。冗談じゃない、親はどこにいるんだ。必死で捜すうち、意外な事件に巻き込まれていく。
医療ミステリーの第二弾で、今回のテーマは生殖医療。現実にも何かと話題が多く、魅力的な題材だが、技術と法や社会常識との軋轢、先端医療を選ぶ人たちの心情などには、あまり踏み込んでいない。その分テンポがよく、真実を求めるヒロインと、ヒロインに迫る刑事のスリリングな追跡劇を、存分に楽しめる。
印象的なのは、ヒロインの性格設定だろう。野心に燃え、自分勝手で、周囲の人間を見下し利用する。言ってしまえばどうにも鼻持ちならない女。それだけに、終盤の激しい気持ちの揺れが、落差をもって胸に残る。ちょっと名作「女には向かない職業」(PDジェイムズ、ハヤカワ文庫)を思い出した。(2006・10)
« 「タックス・シェルター」 | Main | 「赤い指」 »
Comments