「ワーキングガール・ウォーズ」
「ブラディマリーですか、今夜は」
「うん」
あたしは言った。
「血まみれ女王様の気分なのよ、今夜はね。みんなに憎まれて恐れられた女王様」
「彼女は尊敬されてもいたんです。問題は多い女王だったけど、結局、エリザベス一世を殺さなかったし」
八幡の声が、耳に響いた。
「それを忘れてはいけない」
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき著(新潮社)ISBN:4104711012
37歳、未婚。総合音楽企業の企画部で係長を務める女性のリアルな日常と本音。
夢中で働いているうちに、いつのまにか管理職一歩手前。人当たりは悪いから周囲に疎まれているのは自覚しているし、もう現場で走り回る充実感はない。野心家の部下やセクハラ上司にいらだちも募る。それでも自分の頭で解決策を考え、トラブルに一つ一つ立ち向かっていく。結局は仕事が嫌いではないし、女としてのプライドもあるのだから。
オーストラリアへの一人旅で知り合った旅行社勤務の女性の視点をまじえつつ、平成ワーキングウーマンの心意気を軽妙に綴る。トラブルの謎解きや、女同士のべたべたしない友情、年下の同僚との恋も織り込んで、深刻になりすぎない。「anego」(林真理子著)などと比べると展開に衝撃はないけれど、その分、楽しく読めて爽快。バランス感が、この作家のうまさなのだろうか。(2006・9)
『ワーキングガール・ウォーズ』柴田よしき
ワーキングガール・ウォーズ 柴田よしき
<面白い>『ワーキングガール・ウォーズ』 柴田よしき (新潮社)
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» ■ ワーキングガール・ウォーズ 柴田よしき [本を読んだら・・・by ゆうき]
ワーキングガール・ウォーズ柴田 よしき 新潮社 2004-10-21by G-Tools , 2006/04/21
墨田翔子、37歳、未婚、恋人なし。入社15年目、有名企業企画部係長。たまりにたまったストレスを解消すべく、何年ぶりの海外旅行を思い立ちます。ペンギンを見に、ケアンズへ。
そこで翔子が出会ったのが、嵯峨野愛美、30歳、未婚。ケアンズの小さな旅行会社の契約社員です。自分の現状に満足できない2人の生活と、友情を描いた連作短編集。働く女性の本音と弱音が描かれた、応援歌的小... [Read More]
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