「偽装報告」
「そうだよ。組織って、そんなにヤワじゃない。異端者はしめつけられ、飼い殺しにされ、ついには職を失う。そんな事例はこれまでいくらでもあったさ。でも、会社は変わらないんだ」
峯岸さん、と郁子の声がいっそう深くなった。
「闘うのよ。敗れたっていいじゃない」
「偽装報告」高任和夫著(光文社) ISBN:4334924921
名門、五代自動車で進行するリコール隠しの病。病巣摘出までのドラマを描く。
組織の中で、実績も実力もある人が上に立つと、その誤りをただすのは、日に日に難しくなっていく。そんな環境に合わせ、カメレオンのように自分を染めて、生き残っていこうとするミドル達の身の処し方もまた、自然な生存本能なのだろう。
そんな現実をリアルに描き出しつつ、それでも染まりきらない部分に光をあてる展開が爽快だ。終盤はやや登場人物達が格好良すぎる感もあるが、暴露趣味に走りすぎず、企業小説の楽しさを味あわせてくれる。(2006/8)
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