「亡国のイージス」
「おれは自衛官の道は踏み外したが、シーマンシップだけは捨てない。救援を求める者がいれば、なにを捨ててでも助けるのが海で生きる者の掟だ。そう教えてくれたのは、部屋長、あんただ」
「亡国のイージス」福井晴敏著(講談社文庫) ISBN:4062734931 ISBN:406273494X
策謀と男たちの想いが渦巻く海上自衛隊の護衛艦「いそかぜ」が、突然反旗を翻し、平和なニッポンを悪夢に陥れる。「本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏内に設定されている。その弾頭は通常に非ず」ーー。
外界から孤絶した護衛艦と、その反乱を息を飲んで見つめる政府中枢とを舞台にした、長編軍事サスペンス。スケールの大きい国際政治の舞台裏や、護衛艦など細部の描写が読みどころなのかもしれない。だが、そうしたことにあまり関心を持たなくても、十分、楽しめる。メーンキャストから端役に至るまで、登場する男たちそれぞれが抱える背景、過去の物語を丹念に書き込んでいるからだ。
実は、はらはらドキドキのアクションシーンは、長編の中のウエートとしてはそれほど高くない。さらには国防のあり方とか、組織の中での生き方とかを考えさせる要素も、それほど感じないのではないか。父と子の、あるいは夫と妻の、やや粘っこいまでの悔恨と許しのストーリーの印象を強く感じた。
この人気作家の著書を、今回ようやく初めて読めたのだけれど、評判通り。随所に伏線を張り、どんでん返しを散りばめつつ、大勢の登場人物の物語をまとめ上げる腕力は相当なもの。日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞受賞。2005年映画化。(2006・5)
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映画化じゃないか、真田広之と佐藤浩市、見るに決まってるやん。
ってわけでにわかに盛り上がる私であるが、これを読んだ数年前に
書いた感想をタイムリーだとばかりにアップしてみる。
そうかあ、面白かったんだね、私。と過去の私に言ってみる。
その後福井作品はあと2冊(「川の深さは」「Twelve.Y.O」)読んだが、
どれも「亡国・・」の焼き直しみたいだった。
(執筆はこれより早かったりするんだけど。)
なので今は福井氏からは遠ざかってるんだけど、
それにしても「戦国自衛隊」も... [Read More]
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いきなりTBごめんなさい。一緒にコメントしましょー。 [Read More]
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