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June 19, 2006

「迷走する家族」

つまり、「豊かさ」をめざすことが戦後家族のアンデンティティである限り、家族は、これらの豊かさの象徴を追求し、手に入れることが求められる。それゆえ、家族生活の経済的負担は、雪だるま式に増えていく。

「迷走する家族」山田昌弘著(有斐閣) ISBN:4641173125

「パラサイトシングル」や「希望格差」を鮮やかに論じてきた社会学者の、今の時点での集大成といえそうな家族論をコンパクトに読むことができる一冊。

内外の著作のエッセンスも散りばめながら、戦後の「幸せな家族モデル」がどのように形作られ、どう揺らいできたかをたどる。そういう視点でとらえると、現在の少子化は、とりあえずの結婚・出産の先送りという修正の一形態だというわけだ。ところがグローバル化とITに象徴される「ニューエコノミー」の浸透、そして人生の選択の「個人化」によって、そろそろ、そうした修正も限界に達してきた。最終章では短く対策に言及しているが、それよりも家族の変質に対する強い危機感を前面に出している。経済、社会はおそらく後戻りできず、だとすれば家族の役割も再構築していくしかないのだろうが…(2006・6)

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June 15, 2006

「亡国のイージス」

「おれは自衛官の道は踏み外したが、シーマンシップだけは捨てない。救援を求める者がいれば、なにを捨ててでも助けるのが海で生きる者の掟だ。そう教えてくれたのは、部屋長、あんただ」

「亡国のイージス」福井晴敏著(講談社文庫) ISBN:4062734931 ISBN:406273494X

策謀と男たちの想いが渦巻く海上自衛隊の護衛艦「いそかぜ」が、突然反旗を翻し、平和なニッポンを悪夢に陥れる。「本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏内に設定されている。その弾頭は通常に非ず」ーー。

外界から孤絶した護衛艦と、その反乱を息を飲んで見つめる政府中枢とを舞台にした、長編軍事サスペンス。スケールの大きい国際政治の舞台裏や、護衛艦など細部の描写が読みどころなのかもしれない。だが、そうしたことにあまり関心を持たなくても、十分、楽しめる。メーンキャストから端役に至るまで、登場する男たちそれぞれが抱える背景、過去の物語を丹念に書き込んでいるからだ。
実は、はらはらドキドキのアクションシーンは、長編の中のウエートとしてはそれほど高くない。さらには国防のあり方とか、組織の中での生き方とかを考えさせる要素も、それほど感じないのではないか。父と子の、あるいは夫と妻の、やや粘っこいまでの悔恨と許しのストーリーの印象を強く感じた。
この人気作家の著書を、今回ようやく初めて読めたのだけれど、評判通り。随所に伏線を張り、どんでん返しを散りばめつつ、大勢の登場人物の物語をまとめ上げる腕力は相当なもの。日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞受賞。2005年映画化。(2006・5)

「亡国のイージス」福井晴敏
(書評)亡国のイージス

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