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April 09, 2006

「ポーの話」

「そうだな。犬じじのいうとおりだ」
 ポーは大きくうなずき、
「じゃあさ、ほんとうのつぐないって、いったいどういうのだろう?」
 真っ赤なたき火の光を受けながら、犬じじはまぶしげに笑った。そして、新たに注いだコップの中身を一気に干した。
「みんなそいつを、一生かけてさがすんじゃないかね。泥のなかをのたくるみたいに」

「ポーの話」いしいしんじ著(新潮社) ISBN:4104363014

街を流れる泥川で、「うなぎ女」に育てられた少年ポー。下流へ、そして海へと続く冒険と成長。

430ページの長編に、猥雑なイメージを満載したファンタジー。いしい作品ではお馴染みのことだけれども、濁流の底や廃棄物処理場の大穴など、ポーがたどる道程は刺激的だ。特に今回は、豪雨シーンなどのスケールの大きさと相まって、明瞭に大人向けと意識される点が画期的なのではないか。
知らずに人を傷つけ、また、はっきりと知りながらも罪を犯してしまう、愚かで欠けたところのある人物が大勢登場する。それはデフォルメされているけれども、多かれ少なかれ誰の記憶のなかにも棲んでいるかつての自分だ。それでも「生きているうちが償い」だから、皆、懸命に生きていく。文字通りに読んでいて息苦しくなるような、切ない終盤を経て、読者は静かで圧倒的な、生命のつながりを見る。決して読みやすい作品ではないかもしれないけれど、胸に残るものは豊かだ。(2006・2)

ポーの話 いしいしんじ
ポーの話〔いしいしんじ〕
「ポーの話」いしいしんじ

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ポーの話いしい しんじ新潮社 2005-05-28by G-Tools また、不思議な本を読んでしまったぞ・・・。 大きな泥の川が中心を流れ、たくさんの橋がかかる町。川に近い下の方と、水害の少ない上のほうとで、歴然とした経済格差と差別のある町。そんな町で、ポーは、泥の川の岸辺に住みつく「うなぎ女」たちを母として育ちます。長い時間、泥に潜っていられるという特技を持っています。 「うなぎ女」たちの、ポーや、川に対する愛は深いです。彼女達は、難しい事など何も言わないし、ポーにほとんど何も教... [Read More]

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