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April 16, 2006

「ナラタージュ」

 膝の上に載せていたタオルが床に落ちた。前かがみになって拾うと、青いタオルの表面には軽く綿ぼこりが付いていた。別れを告げるときのように軽く払って落とした。
「行こうかな」
 少し明るい気持ちになって答えると、小野君は、良かった、と笑った。

「ナラタージュ」島本理生著(角川書店) ISBN:404873590X

結婚を間近に控えた女性が、フィアンセの言葉でふと心を引き戻される、はたちのころの切ない恋。

数多く発表されているブログ書評を読んでいると、こういう「恋愛小説は苦手」という声もあるようだけれど、私としては案外よかった。
確かに全編恋愛がテーマ。あんまり出口のない展開で、劇的な駆け引きやすれ違いも仕掛けられていない。だから主人公に感情移入したり、読み終わってから友人同士で「男と女、どっちがずるい」などと論争して盛り上がったり、といった手応えは薄いかもしれない。けれども、描かれる日常のシーンが、静かなヨーロッパ映画のように印象的で、引っかかりも無くするすると読み進むことができる。
主人公である女性の自意識が、さほど毛羽立っていないことが大きいのだろうか。そして、しんと淋しく、心地よい読後感が残った。(2006・3)

「ナラタージュ」島本理生
ナラタージュ 〔島本理生〕
ナラタージュ / 島本理生
ナラタージュ 〔島本理生〕

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Comments

こんにちわ。
始めまして。
Seesaaブログの方の記事にTBいただいてありがとうございます。
ライブドアの方をメインに活用していますので、こちらの方からTBをお返しさせていただきました。
>しんと淋しく、心地よい読後感
本当にその通りですね。
泉のように、大切な思い出を持つことができたら、幸せだろうな~と思います。

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