「食品の裏側」
このミートボールは、それまでの私にとって誇りでした。
本来なら使い道がなく廃棄されるようなものが食品として生きるのですから、環境にもやさしいし、1円でも安いものを求める主婦にとっては救いの神だとさえ思っていました。私が使った添加物は、国が認可したものばかりですから、食品産業の発展にも役立っているという自負もありました。
しかし、いまはっきりわかったのは、このミートボールは自分の子どもたちには食べてほしくないものだったということです。
「食品の裏側」安部司著(東洋経済新報社)ISBN:4492222669
食品添加物を扱う商社の敏腕営業マンだった著者が語る食品加工のからくり。
見栄えが良く、安い食品をいかにして生み出すか、その驚くべき手法が次から次へと明かされる。それが身近なスーパーの棚の裏で起きているということに、まず衝撃を受ける。しかし忘れてならないのは、消費者も常識を働かせれば、「こんなはずがない」とわかるはずだということだ。それなのに、少しでも見栄えがよく安いものに手を伸ばしてしまう。都市に住み、忙しい日常を送る多くの一般消費者にとって、いますぐ添加物と決別するという選択肢は、非常に非現実的だということも、著者はよく知っている。だからといって知らなくていいということにはならないのだ。(2005・11)
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