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October 23, 2005

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」

 次の日になって、熱はだいぶ下がったけどボクはまだ、寝たままだった。うとうとしながら昼過ぎに目が醒めた時には、パチパチと聞き慣れた音がする。
 横を見ると、オカンが横浜のさなえおばちゃんと花札をしているのである。

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」リリー・フランキー著(扶桑社)ISBN:4594049664

コラムニストやアートディレクターとして活躍、バラエティー番組などにも顔を出している著者の、家族をめぐる自伝。
物心ついてから癌で母を看取るまでを、時系列で丹念にたどり、多くの読者に「今度の週末、実家に帰ろうか」と思わしめた、話題の感涙長編。私はバラエティーには不案内で、実物の著者のイメージはもっていなかったけれども、ユーモアが散りばめられた450ページをリズム良く読めた。印象的なのは、経済的な要素が物語で大きな位置を占めていること。少年時代の回想には、炭坑町の衰退が影を落としているし、フリーター時代のすさまじい困窮は、おそらくこの時期、日本を覆っていたバブル経済の虚飾の陰画なのだろう。中心テーマである母親との関係でも、「買ってもらったもの」が随所に書き込まれており、それが極めて個人的なストーリーに確かな手触りを与えている。
自分が恥をかくのはいいが、他人に恥をかかすなとしつけたオカン、大学時代風疹で倒れたとき、朝一番でかけつけてくれたオカン、働きづめに働いて、残った蓄えは一人息子の卒業証書だけだというオカン。ありがたいものです。
それにしても、どうしてこうも多くの読者が「確実に」泣きたがっているのだろう…(2005・10)

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』 笑っちゃって泣けちゃって…
「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」 リリー・フランキー

2006年本屋大賞受賞。ドラマ化も。
本屋大賞は『東京タワー』

October 01, 2005

東野圭吾マイベスト3

トラキチさんのMyBestBooks!。東野さんの投票期限が延びたようなので、参加してみます。皆さんとそう変わりませんが。

1位 「片想い」(文藝春秋)
2位 「白夜行」(集英社)
3位 「天空の蜂」(講談社)

本格もユーモアもと、非常に多彩で達者な作家。絞りにくいけれど、人気を決定づけた「秘密」の前と後に分けて考えてみました。「秘密」前は理系のヒトらしい着想の魅力が大きく、「鳥人計画」「変身」なども印象深いけれど、映像的な迫力で「天空の蜂」に。「秘密」後は、人物造形や物語の深みで「白夜行」が圧倒的ですが、これは未完のシリーズのような気もするので、ひとまず2位。同様に切なさが胸に残る「片想い」を1位にしました…

東野圭吾(投票&ランキング)

「危ない食卓」

水やたんぱく質、その他の原料を加えるのは食品安全上、問題ではないというのだ。しかし、私たちがレストランや食堂で食べるとき、トリ肉にラベルはついていない。私たちは、まさかトリ肉でないものを食べているとは思いもしない。

「危ない食卓」フェリシティ・ローレンス著(河出書房新社)ISBN:4309204414

主にガーディアン紙で消費者問題を扱う英国の女性ジャーナリストが、食のグローバリズムの落とし穴を追及。
トリ肉加工工場の深夜業務に覆面潜入し、スペインの農場に足を運んで低賃金で働くモロッコ人に会う。世界的なスーパーマーケットチェーンで、私たちが何気なく手にする食品。それがいったい、どんな畑から、どんな輸送と加工の工程を経てきているのか。ぞっとする話が次々に語られる。その背景にどんな政治経済のからくりがあるのか、一つひとつの事象で見極めるのは難しいが、できるだけ地元の、季節の食材を口にすることが食の喜びという主張はわかりやすい。矢野真千子訳。(2005・10)

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