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September 24, 2005

「家守綺譚」

実は思い当たるところがある。サルスベリの名誉のためにあまり言葉にしたくはないが。
 ーー木に惚れられたのは初めてだ。
 ーー木には、は余計だろう。惚れられたのは初めてだ、だけで十分だろう。
 高堂は生前と変わらぬ口調でからかった。

「家守綺譚」梨木香歩著(新潮社)ISBN:4104299030

駆け出しの小説家が、死んだ親友の親に頼まれ、山科の二階屋の留守居をする。気ままな一人暮らしで出会う、河童やら小鬼やら、異界のものたちとの交流。
明治の文豪の若い頃、といった風情の主人公が綴る形。1項5、6ページでさらりと読めて、無駄のない端正な文章にまず引き込まれる。都のはずれの四季の移ろいを背景に、精霊や妖怪のたぐいが次々現れるのだけれど、隣の世話焼き小母さんや住職がごく当然のものと解説していて、とても微笑ましい。かつて日本人の暮らしには、こんな説明のつかない、けれど魅力的な「暗がり」があったのだと思い起こさせる。多くの読書好きが推薦するのがうなずける、温かい読後感の一冊。(2005・9)

家守綺譚   好きなものを好きなだけ
『家守綺譚』梨木香歩  とみきち読書日記

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