「花まんま」
やがてチェンホは、私に向かって手を振ったかと思うと、屋根から屋根へと飛んで遠ざかっていった。その姿はトカビというより、ランニングシャツを着たピーターパンのようだった。
「花まんま」朱川湊人著(文芸春秋)ISBN:4163238409
路地裏を舞台にした奇想譚6編。1963年生まれの著者が、万博前後の大阪下町を見事に蘇らせる。ほろりとさせる人情話あり、落語調あり、毒を含んだファンタジーあり、と仕立てはバラエティーに富んでいて達者。何より「うまい」と思わせるのは、大人が子供時代を回想する構図をとっていること。だから、みずみずしい感性を保ちつつ、実際には目の前の情景が示す庶民の暮らしの影の部分、理不尽な死や貧しさや差別をすべて了解して語っていて、深みがあるのだろう。第133回直木賞受賞。(2005・8)
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朱川 湊人 花まんま
(文藝春秋刊)
第133回直木賞受賞作
著者プロフィール
1963年、大阪府生まれ。慶應義塾大学卒業。
出版社勤務を経て、平成14年「フクロウ男」(『都市伝説セピア』所収)で第41回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー。
平成... [Read More]
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トラックバック有難うございます。
帰省していて、拝見するのが遅くなりました。
>仕立てはバラエティーに富んでいて達者
私もそう思います。
こちらからも、トラバさせてくださいませ。
Posted by: ahaha | August 22, 2005 10:57 PM
「花まんま」私も昨日記事にしました。トラバさせていただきます。「花まんま」の舞台になる町の町名がわかります。
(想像だけど、多分あってると思います。)あと朱川さんのサイン見れます。よろしくお願いします。
Posted by: 鉄人ママ | October 18, 2005 12:58 PM