「友がみな我よりえらく見える日は」
「仕事にならなくても、電話があるだけでうれしい。自分が忘れられてないって思えるからね」そういうと、長沼は白手袋で電話機を拭いた。
「友がみな我よりえらく見える日は」上原隆著(幻冬舎アウトロー文庫)ISBN:4877288139
都市に生きる市井の人々を題材にした短編ノンフィクション集。何かに傷つきながら、とぼとぼと歩いていく日常を、静かに描く。コラムとしての完成度が高く、よくできたフォークソングのよう。短いやりとりの中に、著者は自尊心の小さな破れ目と、それを繕う一本の糸を描き出す。(2005・8)
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