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June 11, 2005

「anego」

決して克己心とかいうものではなく、この頃の奈央子はいつもの時間に起き、いつもより早く眠る。三日に一度はジムに行き、インターネットで海外の新聞のヘッドラインを読む。お酒の量も変わらず、外食はむしろ減ったぐらいだ。
つらいことがあった時は、日常の持つ大きな力で打ち負かそう、というのが奈央子のやり方である。

「anego」林真理子著(小学館)ISBN:4093933049

商社に勤める奈央子、33歳が経験する恋愛のすべて。

本音満載のOL小説のようであり、合コンなどのノウハウを含むコメディでもあり、後段は深く心理に分け入るホラー風でもある。時代の経済情勢などを踏まえつつ、これだけの要素を詰め込む腕力はさすがだ。

特に、主人公がいつも追いつめられた土壇場の状況で示す潔さが印象的。ときには鬱陶しい正義感にさえみえるけれども、この気っぷの良さのようなものが、おそらく平成ニッポンの女性の一つの到達点ではないかと思えてくる。

2001~2003年に女性誌で連載、テレビドラマ化。(2005・5)

林真理子「anego」

June 05, 2005

「夜のピクニック」

なぜか、その時、初めて歩行祭だという実感が湧いた。こうして、夜中に、昼間ならば絶対に語れないようなことを語っている今こそがーー全身痛みでボロボロなんだけど、顔も見えない真っ暗なところで話をしながら頷いているのが、あたしの歩行祭なのだと。

「夜のピクニック」恩田陸著(新潮社)ISBN:4103971053

全校生徒が年一回、夜を徹して80キロを歩き通すイベント、歩行祭。高校生活最後の特別な一夜に、貴子が決意していたこととは…。

一両日の行程を時間を追って描くという制約のなかで、貴子と融、二人の主人公の思いを交互に描き、ゴールに向かって徐々に重ね合わせていく。物語巧者の面目躍如というべき一作。こだわりを乗り越えていく主人公の成長談だけでなく、二人を取り巻く友人たちそれぞれの、人間を理解しようとする心の動きが爽やかだ。甘すぎるとも言えるけれども、案外人生の入り口というのはこういうものではないだろうか。吉川英治文学新人賞、本屋大賞受賞。(2005・5)

「夜のピクニック」 恩田陸

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