« 「となり町戦争」 | Main | 「イン・ザ・プール」 »

April 22, 2005

「かわうその祭り」

大宅さんは収集家の鑑だよ。自分の収集品の無限の価値を知っていた。無価値といわれる物の真の価値を

「かわうその祭り」出久根達郎著(朝日新聞社)ISBN:4022500123

「獺祭(だっさい)」とは、収集品などを広げて悦に入る様子を、捕らえた魚を岸に並べる獺(カワウソ)になぞらえた言葉。正岡子規は「獺祭書屋主人」と号していたーー。そんなタイトルをはじめとして、蘊蓄が満載のコレクター小説。

満州にまつわる偽切手、怪しげなフィルム、大宅文庫の古雑誌。前半はテンポのいい酔狂列伝だ。それがクライマックスに向けては、国家の闇を発掘するミステリーへと転じていく。手際は鮮やかだ。

印象的なのは、闇そのものの種明かしというより、読者を種明かしに導いていく「古いものたち」の力のほうだろう。80、90年代の日本社会との対比で、ネットなどで簡単に手に入る文化や知識に対する、著者の深い疑念がにじむ。新聞連載の単行本化にあたり、最終章を加筆。(2005・3)

出久根達郎『かわうその祭り』

« 「となり町戦争」 | Main | 「イン・ザ・プール」 »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「かわうその祭り」:

« 「となり町戦争」 | Main | 「イン・ザ・プール」 »