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January 22, 2005

「陰の季節」

柘植を見上げた黛の瞳に、哀れみの色があった。階級が二つも下の、おそらく、退官のその日まで、弱小チームで球拾いを続けるであろう男の瞳に。
柘植は、紙ナプキンとレシートをさらって踵を返した。ジャズと、そして背後の瞳から一刻も早く逃げ出したかった。

「陰の季節」横山秀夫著(文春文庫)ISBN:4167659018

警察が扱う様々な事件の陰で、管理部門の人間が遭遇するもう一つの「事件」。
警察小説の名手の出世作となった短編集。殺人も盗難もなし。人事や監察や「議会対策」という、いわば日の当たらない職務の人物を主役に据え、緻密な心理サスペンスをつむぐ。組織で働くこと、報われず、踏みつけられることの苦さ。くすんでしまっているけれど、それでも捨てられない誇りが胸に響く。作家がこの鉱脈に行き当たるまで、7年かかっているということに敬服。松本清張賞受賞。(2004/12)

横山秀夫【陰の季節】

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