「犯人に告ぐ」
「これに対抗するにはどうしたらいいか。俺は考えた。そしてたどり着いた答えは……」
曾根は人差し指を立ててみせた。
「劇場型捜査だ」
「犯人に告ぐ」雫井脩介著(双葉社)ISBN:4575234990
子供を標的とする卑劣な無差別連続殺人犯が、報道番組に犯行声明を送りつけた。対抗すべく刑事、巻島はテレビカメラの前に立つ。
本題に入るまで70ページ、全編では360ページの長丁場をぐいぐい引っ張っていく。その秘密は、現実離れした舞台設定の驚きより、むしろ冷徹な心理描写の方にあるのだろう。あえて「対犯人」ではなく、捜査する側や報道する側の、いわば身内の駆け引きを主軸にした意外性が秀逸だ。
そして読み進むほどに、つい「これくらい許されるだろう」と思ってしまう人間の浅はかさ、「正義」というものの不確かさが浮かび上がる。多くのミステリー好きが絶賛の一冊。大藪春彦賞受賞。(2004/12)
☆追記 2007年10月豊川悦司主演で映画化。
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