「私は、産みたい」
「何で分かってくれないの、バカ」
「バカはお前だ」
「もう離婚しましょう」
「ああ、離婚だ」
激昂した私は、感情に任せてテーブルをひっくり返していました。
「私は、産みたい」野田聖子著(新潮社)ISBN:4104729019
永田町でスポットライトを浴びる女性国会議員が、知られざる不妊治療の苦闘をつづる。
ひとりのワーキングウーマンとして、職場での無理解や、仕事に対する責任感に煩悶する。一番分かってほしい夫とも、なぜか思いがすれ違う。赤裸々に語られる辛い日々は、ときに極めて現代的な事象にみえる。だが、そうだろうか。根っこにあるのは、おそらく誰もが、いつの時代にも経験しうる、親となることの重さなのだろう。壁に向き合う現在進行形の恐れと情熱が、読む者の共感を誘う。(2004・12)