「天才伝説 横山やすし」
「飲みませんか」
別人のように丁寧な口調になる。
「あとがありますから……」
ぼくは固辞する。
「さよか」
相手はブランデーをグラスに注ぎ、一気に半分ほど飲んだ。酒をたのしむ人の飲み方とは思えない。
「天才伝説 横山やすし」小林信彦著(文藝春秋)ISBN:4163537503
破天荒なひとりの芸人の、51年を描く評伝。
「漫才ブーム」の中でも別格の実力をもつ爆笑コンビであり、3面記事の事件でもお馴染み。何かと派手な浪速の「やっさん」。しかし、著者自身が実際に見聞きしたあれこれは、そんなイメージを見事に覆し、芸の求道者というもう一つの顔を浮かび上がらせる。ちょっと切ないくらい、時代遅れ。そう考えると、たけしとは3歳しか違わない、という指摘が意味するところは奥深い。80年の独演会の場面が圧巻。(1998/11)
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