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November 24, 2004

「ららら科學の子」

空と道が狭くなったような気がした。しかしあるのは、間違いなく銀座であり有楽町だった。
いざ歩いてみると、その思いはいっそう募った。何も変わっていないような気さえした。

「ららら科學の子」矢作俊彦著(文藝春秋)ISBN:4163222006

学園紛争の時代、訳あって中国に渡った男が密かに帰国する。30年の時を経て男が見たものは…。
ハードボイルド作家が描く「あのころの未来」。携帯電話も知らない主人公が、タイムマシンに乗ったようにちぐはぐな行動をとる。でも実は、何も変わっていないのではないか、という感じが底流に流れる。なぜ変わっていないように思えるのだろう。装丁がおしゃれ。三島由紀夫賞受賞。(2004/10)

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ららら科學の子

November 07, 2004

「天才伝説 横山やすし」

「飲みませんか」
別人のように丁寧な口調になる。
「あとがありますから……」
ぼくは固辞する。
「さよか」
相手はブランデーをグラスに注ぎ、一気に半分ほど飲んだ。酒をたのしむ人の飲み方とは思えない。

「天才伝説 横山やすし」小林信彦著(文藝春秋)ISBN:4163537503

破天荒なひとりの芸人の、51年を描く評伝。
「漫才ブーム」の中でも別格の実力をもつ爆笑コンビであり、3面記事の事件でもお馴染み。何かと派手な浪速の「やっさん」。しかし、著者自身が実際に見聞きしたあれこれは、そんなイメージを見事に覆し、芸の求道者というもう一つの顔を浮かび上がらせる。ちょっと切ないくらい、時代遅れ。そう考えると、たけしとは3歳しか違わない、という指摘が意味するところは奥深い。80年の独演会の場面が圧巻。(1998/11)

物欲的日常: やっさん・寅さん

November 03, 2004

「アフターダーク」

「よかった。けっこう気になってたんだ。もちろん僕にはいくつか問題があるけど、それはほら、あくまで僕自身の内部的な問題だから、そんなにやすやすと人目につかれると困るんだ。とくに夏休みのプールサイドなんかでさ」
マリは確かめるようにもう一度相手の顔を見る。「内部的な問題はとくに目につかなかったと思う」
「安心した」

「アフターダーク」村上春樹著(講談社)ISBN:4062125366

深夜のデニーズで本を読む少女。眠っている、その姉。すれ違う男女が、都会で朝を迎えるまで。
人の世に、そして読む者の心の中に、光と闇がせめぎ合う。やがて静かに希望へと向かうように思えるけど、確信は持てない。コンビニの棚に置き去りにされた携帯電話のエピソードが印象的だ。悪意の不意打ち。ちょっと「ささやかだけど、役にたつこと」(レイモンド・カーヴァー著、「Carver’s Dozen」中公文庫所収)を思い出した。闇を生きていくには、何か大事なことを思い出す、そんな気持ちが大事なのかも知れない。
デビュー25周年の書き下ろし長編。これほど多くの人がブログに感想を書き付ける日本人作家がほかにいるだろうか。ストーリーより前に、独特の、翻訳のような会話をうれしく感じてしまう。同時代の読者として、25年という月日に、何やら感慨を覚えた一冊。(2004/10)

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akira的はみだしノート: アフターダーク06
おおた葉一郎のしょーと・しょーと・えっせい:ハルキストの読むアフターダークは、

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