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September 25, 2004

「年収1/2時代の再就職」

「HIKSカップル」--A子さん夫婦のように、夫の経済力が弱まって、専業主婦である妻の再就職を必要としている夫婦を、私はこう名づけた。”Half Income with Kids”(子どものいる年収が二分の一になった)夫婦である。

「年収1/2時代の再就職」野口やよい著(中公新書クラレ)ISBN:4121501411

妻たちが、子供がごく幼いうちから働こうと、動き始めた。その背景を探り、産業と家計の構造変化を浮き彫りにする。
夫の減収などで「大黒柱」が揺らいでいるのに、妻が第2の柱となるには幾つもの壁がある。現実に追いまくられる妻、そして夫たち。実例とデータが豊富で、説得力がある。(2004/9)

本吉正雄の本棚: 年収1/2時台の再就職 野口やよい

September 23, 2004

「出口のない海」

審判を買って出たマスターが右手を高々と上げた。
「プレイボール!」
ドッと沸いた。マスターが涼しい顔で敵性語をグラウンド中に響かせたからだ。

「出口のない海」横山秀夫著(講談社)ISBN:4062124793

人間魚雷「回天」に乗り込むことを選んだ、元甲子園球児らの青春。
96年マガジン・ノベルス・ドキュメントの同名作品の改稿。海の特攻というものの歴史がわかる。著者らしい感動を期待すると少し違う印象かもしれないけれど。日本人のDNAに組み込まれたかのような野球への情熱が印象的。(2004/9)

トラックバックで読書三昧:出口のない海

September 18, 2004

「血と骨」

「それでは生活ができなくなります」
「生活だと。なんの生活だ。こんな生活、ぶっ壊してやる!」
金俊平はいきなり障子や襖を蹴って破壊し、箪笥を倒して布団を引き裂いた。

「血と骨」梁石日(ヤン・ソギル)著(幻冬舎文庫)ISBN:4344401050 ISBN:4344401069

暴力と、妻子も容赦しない猜疑心。 戦中、戦後の大阪を駆け抜けた在日一世の苛烈な半生を描く。
2、3ページの記述で、一作書けるのではないかと思うようなドラマチックなエピソードが、次から次へ。とにかくすべて語ってしまわないと、おさまらない。そんなせっぱ詰まった思いが、行間からたちのぼる。富を築いて、なお絶望的に孤独な主人公。国とは、親子とは、いったい何なのだろう。山本周五郎賞受賞。ビートたけし主演で映画化。(2004/9)

血と骨〈下〉: [面白い本.NET]:読んで面白い本の紹介BLOG

September 13, 2004

「巨大独占」

表通りに面した電話局の玄関から裏に回ると、あたりは、家と家の軒が触れ合いそうな街並みで、道路も狭く、冬場のせいか埃っぽかったのを覚えている。しかし、地下十数メートルの洞道の中には、地表の喧噪とは裏腹に、薄暗い静寂に満ちた空間が広がっていた。

「巨大独占」町田徹著(新潮社)ISBN:4104698016

民営化や再編、技術革新を経てもなお、NTTグループがもつ「独占」の側面を、米国との接点や歴史を織り交ぜつつ描く。
知られざるエピソードが豊富。登場人物も生き生きして読みやすい。競争とはどうあるべきか。その問いは、道路や郵便というインフラのあり方を巡る論議と重なる。(2004/9)

September 05, 2004

「永遠の仔」

「現実に生きてゆくのに、仔どもだからって、誰が遠慮する、誰が助ける。親でさえ、自分の身が一番ってときがあるんだ」
「……かわいそうな人」

「永遠の仔」天童荒太著(幻冬舎)ISBN:4877282858 ISBN:4877282866

二人の少年、一人の少女が再会する。あの山で、幼い胸にしまった秘密とは、いったい何だったのか。
家族間の暴力という重いテーマに、真摯に向き合った長編。この分野では決定版といえるのではないか。多くの不幸、不条理を描きつつも、なぜか爽やかさが心に残る。弱さを抱えた人物がそれぞれに切なく、ミステリーとしての引力も十分。(1999/8)
95年の山本周五郎賞受賞作を大幅改訂したという「家族狩り」(新潮文庫)全5冊も読了。こちらは、息苦しかった…(2004/7)

アオゾラブログ | 永遠の仔

のほ本♪: 永遠の仔(天童荒太)

Pocket Warmer: 本: 家族狩り

September 04, 2004

「戦争が遺したもの」

鶴見 はっきりした理由はないんだよ。ぼんやりしているんだ。人間を動かすのは明確なものじゃなくて、ぼんやりした信念なんだ。ぼんやりしているけど、確かなものなんだ。

「戦争が遺したもの」鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二著(新曜社)ISBN:4788508877

ジャカルタの慰安所からベ平連まで。80才をこえた哲学者の戦中、戦後体験を、二人の論客がきく。
戦後世代の聞き手が繰り出す、鋭くも尊敬に満ちた問いがスリリング。それに答える、鶴見氏の誠実さも印象的だ。3日間にわたる鼎談の記録という形式なので、内容が整理されすぎていない。そんな一冊に詰まった証言は、鶴見氏自身のいう、「進歩と退行を包含した歴史を観る目」に通じるように思う。時間の流れを感じさせる構成も心地いい。(2004/8)

「戦争が遺したもの」というタイトルからは連想できない辛口本-alt.lifeblog

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