「平成三十年」
「日本は横町の隠居ですか」
パーソナル電機相談役の和田守彦も笑い出した。
「パイプラインや飛行機だけじゃありませんよ。情報でも日本の発信は少ないですよ」
テレビ放送会社会長の九鬼孝も私語に加わった。
「そら大変や。横町の隠居ならせめて噂話ぐらいは詳しないとあかんのに」
長谷川がおどけた口調でみなを笑わせた。
「平成三十年」堺屋太一著(朝日文庫)ISBN:4022643242 ISBN:4022643250
2018年。日本経済は高齢化と資源危機で国際競争力を失い、円安、物価高にあえいでいる。産業情報相、織田は大胆な改革論を看板に、天下分け目の選挙を仕掛けるが…。
「団塊の世代」の名付け親が描く、近未来シミュレーション小説。新聞連載が1997年から98年、閣僚就任期間を経て、2002年に大幅加筆して単行本となった。しかし「あとがき」によれば、経済社会の描写はほとんど手直しの必要がなく、2004年初頭の文庫化に至っては、誤植訂正程度にとどまったという。それほどまでに、当初予測した「何もしなかった日本」が、現実となりつつあるというわけだ。脱出策として著者は、戦国武将になぞらえた登場人物たちを通じ、年来の持論を説く。すなわち抜本的な規制緩和、開国、官僚支配の打破。さて、私たちが選ぶ現実はどのようなものなのだろうと、思案を巡らさずにはいられない。(2004/7)
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