「日本三文オペラ」
男たちは確信にみちて夜と物に反抗していた。
「ごついことをやりはりまんなあ……」
「ポウ助、さっさとはたらけ」
それからあとはなにがどうなったのかわからない。フクスケは仲間とまじって必死になって煉瓦をとりのけた。
「日本三文オペラ」開高健著(新潮文庫)ISBN:4101128022
終戦後、大阪のど真ん中に、空襲で廃墟と化した兵器工場跡があった。この国家の闇にいつしか、浮浪者、密入国者らが巣くい、食うために勝手にスクラップを掘り出し始める。人呼んで「アパッチ族」。取り締まる警察と壮絶で陽気な攻防を繰り広げ、猥雑に生にこだわる。スピード感ある大阪弁で、秩序への疑念と、アウトローの悲しさを描き出す快作。作家の取材力が見事。(1980/2)
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