「ななつのこ」
けれど自分でも説明のつかない様々な思いが胸の内にうずくまっていて、お祝いの言葉よりも涙の方が先にあふれ出てしまったのだ。
嫌になるくらい、私は未熟だ。しかも未熟さを理由に大目に見てもらえる時代は、そろそろ頭の上を通り過ぎようとしている。これでもいつの日か、こんな自分を愛おしく振り返るときがやってくるのだろうか。
「ななつのこ」加納朋子著(創元推理文庫)ISBN:4488426018
短大生の駒子は衝動買いをした本「ななつのこ」に魅せられ、作者にファンレターを出す。そこから始まった手紙のやりとりを通じて、身近な事件が解決されていくと…。
多くの本好きが推薦している連作。ミステリーの中に劇中劇のように童話が織り込まれており、構成は緻密だ。随所に、ごく普通の19歳が感じる成長のきしみとも言うべきものを描き、みずみずしい感触。私は友人の薦めで手に取り、失礼ながらやや子供向けかと思って読み始めたが、先入観の愚かさを恥じた。結末も爽やか。菊池健さんの表紙イラストが美しい。鮎川哲也賞受賞。(2002/5)
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