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June 20, 2004

「幻夜」

「ねえ、昼間の道を歩こうと思たらあかんよ」美冬がいった。深刻な口調だった。
意味がよくわからず雅也は彼女を見た。
「あたしらは夜の道を行くしかない。たとえ周りは昼のように明るくても、それは偽りの昼。そのことはもう諦めるしかない」

「幻夜」東野圭吾著(集英社)ISBN:4087746682

悪夢のような阪神大震災。その現場で、青年、雅也はある女と出会う。それは果てない夜の始まりだった…。

「白夜行」から4年半、またしても、これでもかと畳みかけられる数々の罠。500ページを超える長編で、多くの伏線を張りながら破綻無くつむいでいく筆力は、並大抵でない。

わけても、これほど悪魔的な魅力を持つ人物を造形しながら、決して多くを説明しない、その抑制が見事。容易に理由が語られないからこそ、生き抜いていくことの不幸、不条理が際だつのだろう。さらなる続編に期待。(2004/6)

東野圭吾「幻夜」

トラックバックで読書三昧:幻夜

June 19, 2004

「臨場」

「調査官ーー検視で犯行の動機や引き金まで知るのは無理です。そのことは調査官が一番よくご存じのはずではないですか」
「わかると言ったらどうする?」
一ノ瀬は目を見開いた。

「臨場」横山秀夫著(光文社)ISBN:4334924298

ニヒルな検視官、倉石を主人公にした警察小説。
使命感や家族愛を描きつつ、謎解きの小技も詰め込まれた贅沢な連作。優秀で、上司に媚びない主人公だけでなく、一作ごとに変わる登場人物それぞれの洞察力が深くて読ませる。文章の無駄のなさもさすが。事件現場の「通行止め」をあしらった装丁が目を引く。(2004/5)

浮世亭風流24号。でやっとけ!: 『臨場』

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