「コインロッカー・ベイビーズ」
スタジオからの帰り道、二人は西新宿の十三本の塔のまわりをグルグル回った。点灯された窓ガラスは巨大な象嵌となって空へ伸び、先端で点滅する赤いライトが塔の正常な脈拍を示している。カラギ島にダチュラを探しに行こう、キクはアネモネに言った。ダチュラって何? アネモネは塔と塔の谷間に車を止めた。キクの目に塔の先端で点滅する赤い灯が映っている。東京を真白にする薬だ、キクはそう答えた。
「コインロッカー・ベイビーズ」村上龍著(講談社文庫)ISBN:4061831585 ISBN:4061831593
生まれてまもなくコインロッカーに遺棄されたキクとハシ。双子の兄弟として生きのびた二人の破壊の衝動が、暗い近未来の東京を、南海の海底を駆け抜ける。
独特の猥雑で過剰なイメージ。救いようがなく破滅的とも読める。しかし、なによりも物語の持つエネルギーにぐいぐい引き込まれる。常に時代の空気を鋭くとらえる作家だけれど、不思議な生命力がいかんなく発揮された点で、最高傑作では。体力があるうちに読みたい。(1985/2)
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はじめまして、おはようございます。
トラックバックありがとうございました。
「コインロッカー・ベイビーズ」は確かに自分に余裕がないと引き込まれすぎて、物語に負けちゃうかなっていう感じがします。今回はいい具合で読めたのでまた何年か後に読みたいなと思っています。
Posted by: 葉兎 | May 06, 2004 08:53 AM