「血族」
私の名は、こうやってつけられた。これでわかるように、母は、ひらめきの鋭い女だった。大胆な、思いきりのいい女だった。
しかし、はたして、それだけのことで、斬新奇抜な名がつけられるだろうか。私の疑念は、ずっと、いまにいたるまで解けないままでいる。
「血族」山口瞳著(文春文庫)ISBN:4167123045
名随筆家の、ミステリー要素もある私小説。
作家は母のことを、そして父のことを、ずっと考え続けている。同じところをぐるぐる回るように、微にいり細をうがってエピソードを語る。ほとんど一生をかけた長い長い物語。だけれど、やがて謎が解けた時にしみいる感動は、誰の胸にも宿っているとてもシンプルな思いだ。菊池寛賞受賞。(1998/2)
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