「うしろの正面だあれ」
通りを歩いていき、ふとん屋さんの角を右にまがると、二軒目が、わたしの家です。
一日のうちで、夕ご飯が一番いいおかずでしたから、遊びに次いでたのしみでした。
卓袱台のまん中におかれた、大きなどんぶりには、へたを取ったソラ豆や、枝豆をあまからに煮たものが入っています。豆を食べながら、皮に残る煮汁をチューッと吸い込みます。
「うしろの正面だあれ」海老名香葉子作(フォア文庫)ISBN:432301077X
故林家三平夫人で林家一門のおかみさんが昭和初期、東京の下町で過ごした子供時代を生き生きと綴る。ノンフィクションだが、短いエピソードの連なりは小学校高学年向けに語りかける童話のような趣だ。
今ではレトロと呼ばれてしまうような日常。そのあまりに普通の家族の思い出が、その後幼い著者を襲った戦争の残酷を際だたせる。(2004/4)
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