「本当の戦争の話をしよう」
いろんな声が聞こえる。でもそれは人間の声じゃない。だってそれは山の中なんだものな。俺の言うことわかる? 岩だよ。岩が語りかけているんだよ。そして霧だ。
「本当の戦争の話をしよう」ティム・オブライエン著、村上春樹訳(文春文庫) ISBN:4167309793
ベトナムに歩兵として従軍した作家の、0・ヘンリー賞受賞作を含む短編集。
ストレートな反戦とは少し違う。ときにはユーモアさえあるエピソードや、現実感がないほどに悲惨な体験。決して大きく振りかぶっていないけれど、狂気が静かに染み込む。訳者はあとがきで、「正直に言ってあまりうまい作家とは言えないかもしれない。(略)しかしそれにもかかわらず、ティム・オブライエンは訳者にとっては敬意を払うに値する数少ない現役作家のひとりである」と記す。それにしても人はいつまで、こんなことを続けるのだろう。(2001/8)
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