「ワンダフル・ライフ」
ホモ・サピエンスは、恐ろしいことに、広大な宇宙のなかの”そのようなささいなこと”であり、偶発性という領域のなかで起こったとてもありそうにない進化の一事件である。
「ワンダフル・ライフ」スティーブン・ジェイ・グールド著、渡辺政隆訳(ハヤカワ文庫)ISBN:4150502366
1909年、カナダのブリティッシュ・コロンビア州で5億年前の化石小動物群が発見された。奇妙奇天烈な生き物たちは、既存の分類体系のどこにも収まらず、やがて生物進化論に全面的な見直しを迫ることとなる。
進化生物学の研究者で科学読み物の名手である著者が化石発見と解釈の経緯をたどる。権威と現場主義がぶつかり合う緊迫の人間ドラマだ。
それにも増して驚きなのは、次から次へと登場する不思議な形態の生き物の図版。エビのしっぽ、ぺちゃんこのナマコ、真ん中に穴が開いているクラゲが合体したアノマロカリスなどなど。「バージェス頁岩」は「カンブリア紀の大爆発」と呼ばれる多種多様な生物が生きた時代の一大パノラマなのだ。
研究が進めば、グールドがつづった言説も古びていく。それでも570ページを貫く、歴史と生命に関する想像の翼の魅力は色あせない。(2000/6)
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