それに、いったん始めたことを途中でやめるのは気にくわない。”秘密は誰にでもある。問題はどんな秘密を見つけだすかだ”
「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」スティーグ・ラーソン著(早川書房) ISBN: 9784152089830 ISBN: 9784152089847
ジャーナリストのミカエルは不正を追及した実業家、ヴェンネルストレムに名誉毀損で逆襲されて有罪となり、活動の休止を余儀なくされる。そんなとき、引退した大物オーナー経営者、ヘンリック・ヴァンゲルから依頼が舞い込み、40年も前にヴァンゲル家で起きた、ある少女失踪事件を洗い直すことになる。
大評判のミステリー3部作の、第1部上下巻を読んだ。多くの本好きの絶賛どおり、孤島からの失踪、暗号、猟奇殺人から世界を股に掛けたハイテク捜査まで、あらゆるミステリーの要素がてんこ盛りで、しかもその要素が巧妙に組み合わされた一大娯楽作だ。
巻頭に地図が添えられているせいか、自分には馴染みがないスウェーデンが舞台ということは、あまり苦にならなかった。途中からヴァンゲル一族の人物がぞろぞろ登場して、誰が誰だか混乱したけれど、それも220ページあたりまで。凄腕女性調査員のリスベットがミカエルに絡んでくると、もう止まりません。
本筋ではないはずのリスベットの破天荒な人物像が、際立って鮮烈だ。やせっぽちの体にタトゥーやピアス、粗野な言動で社会に全く適応しないけれど、ものすごく頭が切れて、人が一番隠したいと思っている秘密に手段を選ばず迫っていく。特に卑劣な暴力に対しては、決して容赦しない。こんな探偵役、みたことない。
ストーリーの柱は二つある。ミカエルの実業家ヴェンネルストレムに対する闘いと、ヴェンゲル一族の犬神家ばりに胡散臭い過去。それぞれの謎解きが面白いのはもちろんだが、謎解きの過程でミカエルとリスベットが世の不正に対して示す怒りが、強い印象を残す。単に痛快というだけでない。自らもジャーナリストである著者のプライド、信念がエンターテインメントに独特の味付けを施している。
訳文も読みやすいと思う。著者がすでに他界しているのがとても残念だけど、第2部、第3部を読むのは楽しみだ。ヘレンハルメ美穂・岩澤雅利訳。(2009・5)
◎◎「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」上下 スティーグ・ラーソン 早川 1700円 2008/12 「本のことども」by聖月
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